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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│『なんくるの普通の日々』Vol.009
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「生まれる。」
何かをあたらしく始めることは勇気がいる。自由に軽々といろんなことに挑戦できる人もいれば、ふと恐怖にとらわれたり、不安になる人もいる。わたしもどちらかというと臆病な方だ。そんなわたしが、それまでとは違った別の生き方を探していたときに、友人が一冊の写真集をプレゼントしてくれた。川内倫子さんの写真集『AILA』だ。
川内さんの写真は、それまでも写真集やテレビなどで目にしていて、とても好きな写真家だった。やさしい色と、とても静かだけど、こころの強さのようなものを感じさせてくれる作品たち。穏やかな日常の一瞬をとらえているのに、緊張感に満ちた美しさがある。きっと彼女自身が、そういう人なのだと思う。
『AILA』を1ページずつ開いていくうちに、ものすごく感じたことがある。それは自分も含めて「生きている」ということ。写真集の1ページ目では、たくさんの卵が孵卵器のようなものに入っている。いよいよヒヨコが生まれようとしているらしい。夜の海岸に白い波しぶきが打ちつける。卵が割れる。ガラスが割れる。人や、動物の子どもたちが等しく生まれる。溶岩が黒く静かに地球の表面を流れていく。やさしい瞳の馬。深いまなざしでこちらを見つめるフクロウ。
写真集をもらったばかりのときには、エネルギーが痛いほどに伝わってきて、長く見ていることができなかった。いま時間がたって見返してみると、その時の友人の気持ちに改めて感謝したくなる。生きものがこの世に生まれてくる時って、こんなにきれいで、でも苦しくて、純粋なエネルギーでいっぱいなんだ。古い何かを脱ぎ捨てて、何かを壊して、あたらしく生まれる。ちいさな虫も、人も、みんなそれぞれの命をかけて繰り返してきたことなんだ。川内さんの写真のすごさに、希望という命を、ふたたびもらったような清々しさを感じた。
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│著者:なんくる
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