恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.010「私を、きちんと生きること。」
2007.02.02

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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』story.010
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「私を、きちんと生きること。」
 
杏ちゃん29歳、一児のワーキングママ。結婚して2年になるご主人とは、友人の職場の同僚として知り合った。
 
「ダンナと知り合った頃の私は、『人を好きになるって一体どんな気持ちだっけ〜?』と考えるくらい、恋愛にとんとご無沙汰していました」
 
 実は出会った当初から、ご主人は杏ちゃんに好意を持っていたという。
しかし、杏ちゃんはそんな事とは露知らず。気の合う友だちのひとりとしか考えていなかった。
 
 だから深い意味もなく彼と二人で遊びに行ったり、彼の部屋でごはんをご馳走してもらったり。
 「今思うと、部屋に上がったりしてかなり大胆ですよね。でも、彼といると女友達といるみたいで、すっごく居心地がよかったんです」
 
 これまでは、好きな人に少しでもよく思われたくて、無意識に頑張ろうとして気疲れしていたという杏ちゃん。その点、彼とは長時間いても楽だし、心からくつろげたという。
 
「『私もこんな人となら一緒に暮らせるのに〜』と、まるで他人事のように思ってました。あ、昔、付き合っていた人と、試しに3日間同棲ごっこをした事があるんです。その時はものすごーく疲れて、早くひとりになりたくて。私は他人と一緒には暮らせないかもしれない…と軽いトラウマになってたんです」
 
そんなのほほんと平和な二人の関係に、ある日事件は起こる。
杏ちゃんが別の男性から「今度二人でごはんでも」とアプローチされたのだ。
 
瞬間、杏ちゃんが思ったのは『え〜面倒くさい…時間がもったいない』ということだった。
「ほんっと失礼ですよね私。いったい何様なんでしょうか?」
 
その時湧き上がった「面倒くさい」という感情から、杏ちゃんは初めて「彼」という存在を考えてみた。
 
 彼と遊ぶのはぜんぜん面倒じゃないのに。それになぜか彼に悪い気がする。別に、つき合ってもいないし義理立てする必要もないけど!
 でも、もし別の人とごはんに行ったのを彼が知って、私の前から去っていってしまってはいやだ!彼を失っては困る!
 
そう結論を出した杏ちゃんは、すぐさま電話を取り、別の男性に理由を話して丁重にお断りしたのだった。
 
しばらくして彼から交際を申し込まれ、めでたく正式にお付き合いすることに。
「今までの恋愛とはリラックス度が全然違うので、ほんとにこんな楽でいいのかと戸惑いました」
そして、紆余曲折どころか、特別な決心も覚悟もなく、自然の流れのままにハッピーゴールイン。
 
杏ちゃんの恋のお話は、どこにも無理な力がかかっていない。自然だ。
彼女は天性の恋愛上手なの?
それとも結婚する人とは、そうやって泣いたり我慢したりしなくても、スルスルと神様が出口に導いてくれるものなの?
 
「誰かと出会うために、特別な事って何もないと思うんです。私もご無沙汰してたし、30歳までに相手が見つからなければ、お見合いもしようと割り切っていたし。でも、出会いがないとジタバタするよりも、目の前にある、やらなくてはならないことをきちんとする。周りの人に誠意を持って接する。そうすれば、自分を必ず誰かが見ていてくれる、ふさわしい人が必ず引き寄せられてくる。そう信じていましたね」
 
ご飯をきちんと食べたり、気持ちをていねいに言葉にしたり。間違うことを怖れなかったり。
目の前にある自分を、きちんと生きることがだいじ。
 
「だから、Sawakoさん。大丈夫ですよ」
 
頬笑んだ彼女がまるで菩薩(ぼさつ)のようで、人生と恋と自分に振り回されて疲れていた私は、すこし泣いた。
 
 
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│著者:Sawako Matsuoka(コピーライター)
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