なんくるの普通の日々 Vol.017「画家と猫」
2007.10.01

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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│『なんくるの普通の日々』Vol.018
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「画家と猫」
 
猫を愛し、猫を描いた画家はたくさんいる。パリで活躍した藤田嗣治が有名
だけど、もう一人、熊谷守一の「猫」も、自由と優しいまなざしに満ちてい
て素敵。
 
「猫にくらべて犬は人間の言うことに気をつかうので、それほど好きではあ
りません」などと、猫好きそのものの言葉を遺している熊谷。野良猫や飼っ
ていた猫を数多く描き、なかでも「白猫」は有名となった。おもに油彩で描
かれているのだけど、シンプルなアースカラーの背景に、茶の線で縁取られ
た白い猫。人間に媚びず、本能の赴くままの表情がかわいらしい。
 
そして、たくさんの猫のなかでも印象的なのが「眠り猫」という作品。熊谷
の膝の上で安心しきって眠っている猫。背中をまるめて、でも顔は仰向けで、
かわいい鼻とあごがのぞいている。彼が猫といっしょに昼寝している写真も
残っていて、ほんとうに微笑ましい。
 
熊谷は猫のように、素直に自分の心のままに自由に生きた人だった。1880年
に岐阜県で生まれ、東京美術学校(現在の東京藝大)で洋画を学んだが、本当
に描きたいときにしか絵を描くことができなかった。そのため、生活も困窮
して幼い子どもをなくしているほど。動植物とともに暮らし、夏には草木が
生い茂る庭のゴザに寝そべった。蟻の歩き方を何年もかけて観察し「蟻は左
の2番目の足から歩き出すんです」と言ったとか。
 
晩年には白い髭をのばした風貌と暮らしぶりで仙人とも呼ばれた。文化勲章
も辞退し、1977年に97歳で亡くなるまで、生涯を通して俗世の価値観から離
れ、自分の時間を楽しんだ。
「いくら時代が進んだといっても、結局、自分自身を失っては何にもなりま
せん。自分にできないことを、世の中に合わせたってどうしようもない」
とことん、自分の内にある自由を愛した人生。数十年たった今も、響いてく
る言葉だと思う。
 
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│著者:なんくる(コピーライター)
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