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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│なんくるの普通の日々 Vol.028
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「美しさと恐さと」
暑い夏には、怪談をひとつ。といっても、アートの話。怪談に登場してきそうなくらい美しい容姿を持ち、恐い絵を描く日本画家がいるのをご存じだろうか。彼女の名前は松井冬子。大寒に生まれたので「冬子」と名づけられたとか。彼女が描くのは、花や女性をモチーフにした、いわば現代の幽霊画。伝統的な日本画の流れを受け継ぎながら、痛みに満ちた精神世界を、繊細さと超絶技工で丁寧に描きあげていく。自身の美しさと相まって、いまや日本画というジャンルを超えて、人気を集めはじめている。
松井冬子は、1974年生まれ。女子美術短大で油絵を学び、その後、日本画に転向。昨年、藝大の日本画専攻で女性で初めて博士号を取得した才女。男性で同じく藝大の日本画で博士号を取った人に、村上隆がいる。彼が描く「かわいい」世界とは正反対の、「痛み」を伴う彼女の絵。一度見ると忘れられない程の恐さとインパクトがある。
その驚くべき美貌と女子美で培ったセンスの良さで、雑誌でも本物のモデル以上に存在感を見せたり、2006年にはVOGUE NIPPON のWOMEN OF THE YEARにも選ばれている。そんな奇麗でおしゃれな女性が、なぜ、悲劇的な絵を描くのか。作品の持つ力に惹かれるのはもちろんのこと、謎に満ちた彼女自身に興味をもち、魅せられている人も多いはず。
日本では古来、幽霊画は「魔をもって魔を制す」という考えで、通人の間では、厄払いや縁起物として扱われていたとか。現実には見たくないものを、あらかじめ絵にしてさらけ出してしまうことで、難を逃れたり、救いを得ていたといった感じだろうか。
彼女の美意識を正確に理解することはできないし、その心とからだに、どれほどの痛みが宿っているのか、想像もつかない。でも、事実、恐ろしいくらいに彼女は美しく、自画像ともいえる作品も、怪奇に満ちている。
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│著者:なんくる(コピーライター)
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