恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.036「不毛な傷」
2009.03.31

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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』story.036
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「不毛な傷」

アパレルメーカーに勤める理衣ちゃん(32歳)。松嶋菜々子似の美女で、仕事もバリバリこなす彼女。しかし、理想が高く、普段から「イケメンとしかつき合わない!」と断言しているせいか、ここ数年彼氏ナシ。


そんな理衣ちゃんが仕事で出会ったのが、一歳年下の彼。

「第一印象は自信過剰なチャラ男。全然好みじゃないし、もう会う事もないだろうなと思っていたら、半年後に突然『飲みに行かない?』と連絡が来て」


「じっくり話してみると意外と話が合った。帰国子女って事もあってか、どっしりと構えてて、ストレスを溜めないタフな性格。今まで会ったことのないタイプだった」


彼には、奥さんと子どもがいた。

「携帯の待ち受け画面は子どもだし、私も既婚者に興味はないし。彼にも『誰かいい男紹介してよ』とか言ってたの。なのに、帰り際に手を繋ごうと言われて。『何で繋がなきゃいけないの〜?』と言いつつ、久しぶりで嬉しくなっちゃって」

三度目のデートで、彼が「好きかも」と告白。
「奥さんに対してやましさはないの?」と、理衣ちゃんは彼に聞いた。

「嫁は別格だから。怖いし、バレたら即離婚だって言われると思う。でもバレたとしても、俺は99%離婚するつもりはない」と彼。

「最近いい出会いもないし、彼氏出来るまでなら付き合ってもいいかな」と理衣ちゃん。仕事が終わってから毎日会うようになった。


「完全に遊びだと思って割り切ってる。駆け引きしなくていいし、どうせいつか終わるって分かってるから、相手にどう思われてもいい。彼氏みたいに嫌われるのを恐れて、自分を作ったりしなくていいからすごく楽なの。素の自分をさらけ出せるし、ワガママも言える。妬いたりもしない」


あっけらかんと話す彼女。
いつもの女友達で飲んでいた時も、彼に突然呼び出され、「じゃあね〜」と手をひらひら振って行ってしまった。
「どこ行くの?」と聞くと「ホテルかな」と即答。理衣ちゃん・・・。


正直言って、彼女が楽しそうなのは羨ましい。でも、心にザラッとした違和感がついて離れない。

恋愛マスター・ナナコさんに聞いてみた。今は幸せな結婚をして、二児のママとなった彼女。

「即刻止めるべきだね」とナナコさんはバッサリ斬る。


「お互い割り切った関係なんて全然面白くないし、何も生まれないよ。割り切ってると言いながら、刺激的で、多少なり相手に魅力を感じるからそんな関係になる。最初は遊びのつもりでも、そのうち自分の元に来てほしいって願うようになる。自分が先か、相手が先か、いずれはどちらかが本気になる。相手が既婚者の場合、恋を成就させるには、ものすごく高いハードルが待ってるよ」

さすがナナコさん、言葉に重みがあります。


「奥さんを舐めてもらっちゃ困るよ。大切な家族を守るためだもん、そう簡単に離婚なんてさせないよ。そうやって、ひとつの家庭をぶち壊してまでも、一緒になりたいと思う?自分は絶対本気にならないと誓ってて、もし相手が本気になったら?軽い火遊びのつもりが、何の罪もない子供と奥さんの人生を狂わすとしたら?自分に対して罪悪感も嫌悪感も持たずにいられる?」


「楽しければいい」——。理衣ちゃんには、罪悪感や覚悟のかけらもない。
32歳で、それがいちばん痛い。痛すぎる。


「もし、本当に割り切った関係だとしたら、彼にとっては退屈しのぎのセカンド。それだけの価値と思われてるって事だよ」
つまりは、プライドの問題なのだ。

頭でダメだと分かってて堕ちてしまう。そんな「不倫」の魅力ってなんだろう。

「普通の恋愛よりスリルがあるのは事実。お互い本気なら、不倫ほど燃え上がる恋はないよね。ただ、その結末がハッピーエンドになる確率は限りなく低い」とナナコさん。

「理衣ちゃん一人が悪いわけじゃない。最初に口説いてきた男性の方ががもっと悪い。ただ、ゲーム感覚で他人の家庭を壊してるという愚かさに気づいてほしい。むしろ、家庭は円満になってたりしてね。そうなら、なおさら目を覚まして。彼の欲望のはけ口になってるだけだって」

最近、彼は理衣ちゃんに言ったのだ。「お前に彼氏ができたら、俺はソッコー捨てられそう。耐えられないよ」

うん、男が悪いよ。だからこそ、そんな彼を受け入れ、現実から目を背けてしまっている理衣ちゃんに私は腹が立つ。

後日、理衣ちゃんから私に「雪だるま」の写メールが届いた。

「可愛いでしょ?雪が降った日、彼が作ってくれたの。誕生日には絵本をプレゼントされたよ。メール履歴を読み返してたら、結構楽しい思い出がいっぱいだった。私には、彼みたいなタイプが合ってるんだと思う。彼以上の人に会えたら、今度こそ捕まえるよ」

「いずれ、本気になるよ」
ナナコさんの言葉が現実となりつつある気がして、胸が少し痛くなった。

どんなに強がっていても、傷つかないほど理衣ちゃんは悪女ではないし、馬鹿でもないし、タフでもない。普通の女の子だからだ。

人生には、無駄な経験なんて何ひとつないという。
でも。傷にはなっても、糧にならない恋愛をしている時間は、私たちにはもうない。
 
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│著者:Sawako Matsuoka(コピーライター)
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