『なんくるの普通の日々』Vol.036「50年後の自分へ。」
2009.03.31

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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│『なんくるの普通の日々』Vol.036
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「50年後の自分へ。」

11歳から40代半ばまでの女性達が、自分の50年後を想像し「おばあちゃん」に扮して撮影された写真がある。タイトルはそのまま『マイ・グランド・マザーズ』。一年後の自分もよく見えない、いまという時代のなかで、あえて50年後という、時間を超越した設定が素敵な、不思議な魅力が漂う作品たちだ。

作者で現代美術家のやなぎみわは、モデルとなった女性達一人ひとりと対話しながら、彼らが望む50年後の姿を作り上げていったとか。中には一年近く対話を続けた人もいるという。

登場するグランドマザーは実にさまざま。例えば、森の中で楽器を奏でる、ちょっと魔女のようにも見える老女。抜けるような青空の下で軽やかに踊る年老いたダンサー。好きな本と猫に囲まれて静かな夜を楽しむおばあちゃん。そして、ファーストクラスで旅をしながら、きれいな空と光を眺める凛とした女性。

やなぎみわ自身も、腰の曲がったメーテルの扮装で登場している。北欧の果てのような雪の大地で、たくさんの子供達と歩く場面が印象的だ。

自分の50年後を想像するとき、そのときどきの自分の年齢によって、感じ方はすごく変わってくると思う。10代や20代の初めのころは、自分が歳をとること自体が想像できなかった。自分だけは歳を取らないでいられるのではないかと思ったことは、誰にでもあるんじゃないかな。

でも、よく考えてみると、50年後の自分を想像するって、とってもしあわせなことだ。どこか癒されるような、やさしい気持ちにもなれる。

写真の中にはこんな老女もいた、ひとりで小旅行を繰り返すうちに若い男性と出逢い、アメリカ横断の旅に出た。彼のバイクのサイドカーで真っ赤に染めた髪をなびかせながら大笑いしているという設定だ。
そして、実際の彼女は、撮影で出逢ったその男性と後に本当に結婚したという。
老いた姿を想像することで、いまの自分が、よりいきいきと輝きはじめたのかもしれない。

50年後の姿になることって、本来はすごく抵抗のあること。だけど、未来の姿を自分自身で創り出し、楽しむことで、いまを生きる勇気やパワーが、ぐんと湧いてくるのも確かだと思う。

 
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│著者:なんくる(コピーライター)
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