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│メルマCiCオリジナルエッセイ
│『なんくるの普通の日々』Vol.037
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「女神が守る山」
かつて、富士山の麓のちいさな街で、しばらくの間、暮らしたことがあった。その街の人にとって、富士山はすごーく身近な存在。あまりに近すぎて、山の全体像を見るためには、少し離れた富士五湖に出かけるか、高い山に登らないといけないほど。
なかでも、山中湖から見る富士山の美しさは格別。いくら近くても、きれいに晴れる日ばかりじゃないので、絶景に巡り会えた日は、すごくうれしかった。
それほど近い場所に住んでいたにも関わらず、じつは富士山には一度も登らずじまい。チャンスはいくらでもあった。でも、登った人の話をいろいろ聞いてみると、小学生の頃、立山登山でかなり苦戦した自分には、到底無理とあっさりあきらめてしまったのだ。
湖のほとりや電車や新幹線の車窓から、そして、飛行機から眺める富士山だけでも十分満足だった。でも、本当ならば、もっとリアルに富士山のすごさを感じてみたいと思っていたのも確かだ。
そんな根性なしの人間にも、富士山のリアルな姿をたっぷり味わえる写真集が昨年末に出版された。石川直樹の『Mt.Fuji』だ。しかも、ちかごろの登山ブームで人が押し寄せる夏山ではなく、人もまばらな冬山で撮影された風景は、まさに異界という感じがして、すごくいい。
荒涼とした砂漠のような風景の中にのびる道。そこを歩く人のあまりの小ささ。これが富士山?と思うような、遠くから眺める優美な姿とはまったく別の、厳しいガレ場ばかりが連なっている。
どこかチベットや、アジアの高原を思い起こさせるような、見慣れない光景。古来、信仰の対象となってきた日本の山のまさに頂点にあって、どこか無国籍な雰囲気が漂う不思議。
世界中の人に日本の象徴として愛されている、富士山。
そう言えば、富士山に祀られているのは、木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)という女性の神様だ。
日本一の、実は荒々しい山を守っているのは、桜が咲くように美しい女神様というのも、実物とのコントラストが際立っていて、すごく素敵だと思う。
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│著者:なんくる(コピーライター)
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