恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.041「絶対的幸福」
2009.09.18

┌──────────────────────────────────
│CiCnaviオリジナルエッセイ
│『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』story.041
└──────────────────────────────────


「絶対的幸福」

いつもの女友達と飲んでいる時にふいに聞かれた。「Sawakoが本当に望んでいるものは何なの?」

32歳になって、結婚の二文字が肩にのしかかった。仕事も恋愛も趣味も順調だったが、結婚して子どもがいる友達と比べると、自分には何かが大きく欠落している気がした。結婚さえすれば、その欠けた部分は満たされ、人生は大方ハッピーエンドになると本気で思った。結婚は決してハッピーエンドなんかではないのに。

思えば、心の中でずっと周りと競争しながら生きてきた。どっちが可愛いか、収入があるか。どっちの彼氏がイイ男か。夢を実現させているか。そうやって測った幸せの量は、とても明確で私を安心させた。30歳を超えて、その比較リストに「結婚」が自然と加わった。


そんな幸せ競争はエンドレスで、ときどき苦しくなった。社会や友達、家族、恋人。誰にも私の人生に点数をつけることなどできない。頭では理解できても、心で受け入れる事ができないほど、私は私を他人の評価で縛りつけていた。

「本当に望んでいるものは何?」
こんな単純な質問に答えられない。恐る恐る、開けたことのない問いの扉をそっとひらく。
モシカシテ、ダレカノタメニ、ケッコンシナクテモイイノ?

深呼吸をひとつして、私は自分を解放してあげた。


答えはすごくシンプルだった。大切なのは、誰かと比べた相対的な幸せではない。自分だけの絶対的な幸せを感じられるかどうかなのだ。

たとえば、夜遅くクタクタになって帰宅する時の、濡れた夜気の匂い。寝る前、明かりを消した後にやってくる世界の静寂。こんな自分でも誰かの役に立てたというコップ一杯の充足。大切な人を想う時のうずきや痛み。私が幸せだと感じられるのは私しかいないという孤独な真実。私はここに生きてる、微かでもそう思えること。

誰のためでもなく、私のために私は幸せでいなければいけない。
そしてその幸せのかたちは、ひとつじゃない。

私たちの恋愛履歴は、そんな絶対的幸せにたどりつくためのステップなのかもしれない。
それは、ケータイの着歴のように一瞬で削除できない。昔、恋が終わるたびによく思ったものだ。世の中に「恋愛記憶消去マシン」なんてものが開発されて、その人の記憶を全部消すことができたなら、こんな絶望を味わうことなくて済むのにと。

だけど、もし本当にそんな事ができるようになったとしても、結局、私は消去しないことを選ぶ。どんなに辛いさよならでも、その人を本気で愛したことは宝物だから。忘れてしまうには余りにもたくさんものをもらったから。嫉妬や憎しみ、自己嫌悪、後悔、感謝。感じた気持ち全部が、現在の自分につながっているから。

私たちは、ひとつの恋が終わるたび、勇気を出してリセットボタンを押す。少しだけ大きくなった自分を上書きしながら。リスタートしてはじまる新しい画面は、いつもまっさらでワクワクする。

そして実感する。人生は自分で決めて動かすからこそ、絶対的な幸せを感じることができるのだと。
今の自分を作っているのは、失敗だらけのダメダメな恋愛履歴。そう気づいたとき、すべての日々は愛しいものになる。
 
┌──────────────────────────────────
│著者:Sawako Matsuoka(コピーライター)
└──────────────────────────────────

恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜

恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.041「絶対的幸福」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.040「You can't hurry love.〜恋はあせらず」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.039「Love is give and take」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.038「陽一郎くんの場合 vol.2」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.037「陽一郎くんの場合」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.036「不毛な傷」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.035
『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』 story.034
『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』 story.033
『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』 story.032
『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』 story.031
『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』 story.030
『 恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 』 story.029
〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.028
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.026「ケンジくんの恋」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.025「同じ匂い」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.024「ハンティング・ワールド」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.023「200bのむこう側」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.022「同じ匂い」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.021「ココロの部屋」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.020「30代ガールズ VS 30代男性」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.019「SEX AND THE TOYAMA」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.018「Just as you are.ありのままの君がすき」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.017「リアリティ・バイツ〜恋愛の現実は厳しい」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.016「愛に生きる人」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.015「恋愛ルールズ1:相手の望みを見極める」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.014「心地いい適量」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.013「いちばんたいせつなひと」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.012「愛し続けられる理由」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.011「You're not my honey. きみは僕の恋人じゃない」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.010「私を、きちんと生きること。」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.009「頑張れ!ケイティ・ガール」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.008「大人の、愛し方」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.007「想ってくれない人を、想わない」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.006「ブログ時代の恋の終わらせ方」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.005「身につけるべきは、恋愛嗅覚」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.004「過去の恋は、きちんと踏み台にする。」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.003「恋愛能力の高さは、やっぱり素直さにあり」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.002「飾るのをやめた時、一人の人に出会える」
恋レキ。〜彼女たちの恋愛履歴〜 story.001

コラム一覧